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有機ELより低コストな発光電気化学セルの動作メカニズムを解明 (2023.6.2)

 発光電気化学セル(LEC)は有機性発光素子の一つです。有機発光ダイオード(有機EL)と比べて構造が簡単で柔軟性にも富むことから、印刷技術を活用するなど低コストでの製造が可能です。また、有機ELより低い電圧で駆動できることなども利点で、次世代の省エネ発光素子として注目されています。しかし、その動作メカニズムが微視的なレベルでは未解明のままで、このことが実用化に向けた研究の障壁となっていました。

 本研究では、代表的な有機発光材料のスーパーイエローを用いたLECについて調べました。電子スピン共鳴(ESR)法を用い、LECが動作している状態で電荷のスピン状態を観察したところ、LECに加える電圧が高くなるにつれて発光もESRも増えることが分かりました。さらに、観測した信号の理論解析から、ESRの増加の起源は、スーパーイエローに電気化学的にドープ(注入)された正孔と電子であることを突き止めました。また、ドーピングの進行が輝度の上昇と相関していることから、電気化学的にドープされた電荷が発光層上に分布していることが動作メカニズムとして示唆されました。

 本研究チームの開発した手法により、発光電気化学セルの動作機構について、これまでにない分子レベルの情報を提供することが可能となりました。その情報を基にすることで、低コストでより環境負荷の少ない発光素子の製品開発が効率良く進むことが期待されます。

 詳細は筑波大学のプレスリリースをご覧ください。